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天皇と原爆
 
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天皇と原爆 [単行本]

西尾 幹二
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

真珠湾での開戦から70年。なぜアメリカは日本を戦争へとおびき出したかったのか? 日米戦争の淵源を、世界史の宿命の中にたどり直す、複眼的歴論考。

内容(「BOOK」データベースより)

真珠湾での開戦から70年。なぜアメリカはあれほど日本を戦争へとおびき出したかったのか?日米戦争の淵源を、世界史の「宿命」の中に長大なスケールでたどりきる精細にして果敢な、複眼的歴史論考。

登録情報

  • 単行本: 262ページ
  • 出版社: 新潮社 (2012/1/31)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4104583022
  • ISBN-13: 978-4104583027
  • 発売日: 2012/1/31
  • 商品の寸法: 20 x 14.5 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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By スワン トップ500レビュアー
現在まで6冊刊行されている『GHQ焚書図書開封』(西尾幹二著、徳間書店)が欧米列強と日本との関係についての<各論>だとすれば、本書はその<総論>のようなものだ。
『GHQ』の底に流れる<歴史眼>を披瀝した書、といいかえてもいい。
げんに、著者はいくつも「オヤッ」と思わせるような指摘をしている。

・日本の<昭和史家>は、昭和3年(張作霖爆死事件、不戦条約)から昭和20年(敗戦)までの短いレンジでしか日米戦争を捉えないが、それではものが見えない。

・そこで著者は――建国以来、西へ西へと膨張するアメリカの<本能>をあぶり出し、その国がハワイを併合し、スペインの手からフィリピンを奪い取ると、ついに日本と衝突する、というロング・レンジの<見取り図>を差し出し、こう指摘する。
《この六十年、日本はなぜアメリカと戦争したのかとばかり問うてきましたが、「なぜアメリカは日本と戦争をしたのか」という問いを再考すべきだと思います》(67ページ)

・広大な領土、膨大な資源、黒人などの下層労働階級を有していたアメリカには植民地経営の必要はなかったのに、膨張をつづけていったのは、明らかに世界の<覇権>を狙っていたからだ。それが第4章のタイトル《アメリカの敵はイギリスだった》につながる。

・そうしたアメリカの攻撃性を支えているのは<選民思想>であると、著者は看破する。
《【アメリカを建国した】ピューリタンたちは、ちょうど『出エジプト記』でモーゼがユダヤ人を引きつれて……イスラエルにたどり着いたように、ヨーロッパを脱出してアメリカという新天地を築いたんだと思っている》(122ページ)

・一方、西へ西へと膨張するアメリカの行く手に横たわる日本には、天皇という<祭司>を戴く<国体>観があった。

・そこで著者はいう。
《どうもあの大戦は、宗教対宗教の戦争であるというふうに考え直す必要があるのではないか》(105ページ)

・じっさい、広島・長崎への原爆投下の背後には――、
《アメリカにとって日本は「神の国」に反抗したサタン、悪魔だという認識が、かなり早くからあった》(188ページ)
 その一方では、日本にたいする恐れもあったはずだ。
《天皇の名の下に一糸乱れず、……あれほど頑強に抵抗したすさまじい武力には不気味さをすら感じたはずです。……日本に対する恐れ。日本とは天皇であり、その天皇に対して下手なことはできないぞ、という恐れ》(189ページ)

……以上はもちろん、本書の要約ではなく、私がおもしろいと感じた論点をつなげてみたにすぎない。

本書全体は、日米両国を<世界史>のなかに位置づけ/アメリカにおける宗教、日本における神道・仏教・儒教・国学の伝統を検証し/さらにはバーナード・ショウのイギリス人論や後期水戸学を腑分けしながら/大東亜戦争の<真実>に迫り/いまのわれわれがそれをどう考えるか――という野心的論考になっている。
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21 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 閑居人 トップ100レビュアー
ブッシュ・ジュニアがイラク戦争に踏み切ったとき、「日本を倒して民主主義国家に作り替えたのだから、イラクもできるはずだ」という声がアメリカから聞こえてきた。多くの日本人が、違和感を感じたはずだ。敗戦当初と異なり、戦前の日本が世界で英米仏と同等の議会制民主主義国家であった事実は国民の常識であり、さらにそのルーツは、明治維新以前の江戸時代に確立された統治体制(政府組織)と「村掟」に代表される民法的概念を含む農民社会にあることに気がついているからだ。
だが、アメリカの言っていることは、アメリカから見た「大東亜(太平洋)戦争」の本質をはしなくも露呈している。つまり、あの戦争は、「イスラム世界」同様、全く異なった「日本という宗教・社会体制国家」との「文明の衝突」(ハンチントン)だったと彼らが認識していたことを示している。
アメリカ人の「マニフェスト・ディスティニー」による西漸運動は、西部のフロンティアを超えて太平洋に迫り、中国、満州、東南アジア、豪州を目指した。このとき、アメリカの主要な敵が「イギリスと日本」だったとは、著者の指摘であるが、「利権争奪」の観点に立てばそれ以外にはあり得ない。第一次大戦後、アメリカが「日英同盟の破棄」と「四カ国条約」という名ばかりの相互牽制条約を作り、ワシントン体制を構築したねらいもそこにあった。W.ウィルソンは「14ヶ条」を唐突に出し、「民族自決」をうたったが、その狙いは「大英帝国の解体」だったという著者の指摘は鋭い。結果的に「オーストリア・ハンガリー帝国」を解体しただけだったが。このアメリカの驚くべき狡猾さと事業家的情熱は、アメリカの世界制覇のための自己増殖的活動であり、20世紀を「革命と戦争の世紀」にした原因の一つである。
さらに言えば、もう一つの明白な原因は、20世紀を風靡した「社会主義革命」への幻想であり、それを増殖させていく「コミンテルン」による情宣活動と諜報工作である。アメリカとロシア、20世紀の主役は彼らだったのかも知れない。
また、著者によれば、「欧米の金融資本」は、コミンテルンの策動に水面下で飛びついた。そうでなければ、1930年代にマルローやヘミングウェイのような知識人が「人民戦線」に飛び込んでいく背景が理解できないという。もしその通りなら考えられることは、金融資本から迂回された資金をもとに、巧妙なリクルート活動が行われたのであろう。無名の、しかし、功名心に富んだ青年たちを取り込み、出版を陰で援助する。金融資本家たちのロマンティシズムと保険が「人民戦線」というコミンテルンのカバーを新しい価値あるものに錯覚させたのかも知れない。
著者は本書ではあえて触れていないが、この時期、コミンテルンの策動がアメリカの隠された世界制覇の野心と結びついて成果を上げたものは、エドガー・スノーの「中国の赤い星」である。パール・バックの「大地」がキリスト教布教と結託してアメリカの中国への夢想を駆り立てたものとすれば、スノーは食い詰めた貧乏記者がアメリカ共産党と中国共産党の広報政策に乗って、類い希な成功を収めたケースである。この本を読めば、スノーの日本に関する無知と対照的に中国共産党に関する準備周到な叙述に驚かされる。「毛沢東に率いられた共産党」を農民民族主義に偽装し、毛沢東を「やせたリンカーン」と評するなど、アメリカにアピールする手管を考え抜いている。これらの「レッドブック」はイギリスの出版社が一手に引き受けて出版していたが、その資金はコミンテルンから出ていたものと思われる。林達夫は、かつて「ブラウダー主義」と称してアメリカ共産党指導者のとんまぶりを笑ったが、なかなかどうして、スノーもスメドレーも、変幻自在なエージェント「岡野隆」こと野坂参三もアメリカ共産党に草鞋を脱いでいたのだ。
著者は、ハリー・デクスター・ホワイトに代表されるアメリカ政権内部に巣くったコミンテルンのスパイたちを「スパイという自覚がなく、ソビエトがアメリカと共同で世界統治にあたることのできる同志」と考えていた可能性があるという。そのとおりであるとすれば、ルーズベルトを含めて彼ら全体が「社会主義への幻想」を共有していたのだ。
「大東亜(太平洋)戦争」の原因を、日本の陸軍と海軍との勢力争いに矮小化し、「連合国」を国際正義の体現者のように錯覚することは、アメリカの知的誘導に過ぎない。「大東亜(太平洋)戦争」という日本民族の苦難を、当時の国際情勢を踏まえた、アメリカの世界政策の影響として捉えていく著者の視点は、読者を深い考察の世界に導いてやまない。
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4 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 ちょっと変な例えだが、これは日米間を中心にした西尾版『文明の生態史観』と言ったところが適当か。

 梅棹忠夫が文明的に日本が果たす役割は西欧(特に英国)に近いと言い、東南アジアに占領地を持った時期を解説したのと同様に、日米の文明史的役割を考慮した場合、日米開戦は必然であったと解説している点は、私見では近いものがあると感じる。

 相違点は梅棹が、自身の推論に反して日本の帝国主義的行為が英国に遅れた理由を鎖国に求めているのに対して、西尾は自身の論を「歴史が証明している。」とい言っている(ように見える)点である。もう一つの特徴は、梅棹が自身の論を地理的な要素を中心に語っている事に対して、西尾は宗教を中心に推論している点か。これは中々興味深い。

 全体を通して、非常に知的好奇心を刺激される考察であるが、相変わらず皇室に対する著者の言い分は頂けない。敬意を抱くから批判もすると言った旨の発言を西尾はするが、それは戦前の左翼の発想になってしまう気がする。

 なお、西尾幹二は最近は原発論でも積極的に発言しており、本書でも僅かならが触れている。この原発論に関して、西尾と対照的な立場にある堤堯が、Willの書評で本書を高く評価していた事を付記しておきたい。
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