高度なSFは『ホラー』と見分けが付かない、という感想を小林氏の作品にはいつも抱きます。
この作品も同様、「重力が逆転した世界では、何もかもが空に向かって無限に落下していく」とか「体組織修復の為に注入された一兆個のナノマシンは、大部分が体細胞と融合し、既にそれ無しでは一瞬足りとて生存できない」とか、想像するだけで身の毛がよだつ設定があちこちにちりばめられています。そしてそれらを容赦なく想像させてしまうのが氏の文章の特長。
他にも「真空に晒された人間がどう感じるか」「かつて重力が地に向かって働いていたとすれば、何故現在は天に向って重力が働くのか」「真空での戦闘においていかに核兵器が非効率的か」等々、純粋なSF要素も多々あります。
加えて数百メートル級怪物兵器同士の闘争、魅力的なキャラクター群(全裸少女もいるでよ)、さりげないパロディ(やっぱりプラズマ弾は両手をクロスして放つんですね……)まで詰まっているとなれば、一冊で何粒もおいしい作品であると言えるでしょう。
惜しむらくは、文庫版432頁を費やしつつも、物語が全く完結の気配を見せない事。購入なされる方は、その点を事前に知っていないと肩透かしを食うこと請け合いです。その分で星マイナス一。
ただし、後書きを読む限りでは続編の執筆にも十分な期待をもてそうです。
「勝ったっ!第一部完!」で終わる心配はまず必要はないと思われます。
補足
いろんなところで「エヴァっぽい」て言われてますが、私はむしろリヴァイアスだと思います。
ヴァイタルガーダーに惚れている人はとりあえず読んで損は無いと思いますよ。