食べるシーン・話題が目立つ。もともと飲食シーンは嶺岸作品には欠かせないものだし、連載時期は秋だからかもしれないが、他誌の連載作品や本編に描く余裕がないからが一番の原因だろう。新宿編はまだあったが、渋谷編では北岡がランニングの際に飲んできたと分かるのみ。休憩中に唯一トイレに行ったことからも間違いないだろう(でも、洗った手をちゃんと拭かないのはものぐさにも程があるぞ)。八角のは体に刻み付けられるものらしいから、「飲食」とは呼ばない。大阪は鳴海の淹れるコーヒーくらい。串カツの店で瞬のことをあれこれ聞くシーンもあるが、こちらは印象に残らない。揚げ物もなかったし。
義明が最終的なアドバイスやフォローをしただけで終わらず、さらに一ひねりある展開もいつもより多い。ゲストが正吉や源八やよっちんから大事なことを教わったように、この巻では不在の耕介や正也、天堂や横尾淳といった人たちも誰かに大事なことを教えるようになって欲しいと思った。
「運の背負い」は辛い結末。谷口さんは雄平の支えになることはできたのだろうか。義明も締め括りとしての言葉はかけても、それが谷口さんへの救いとはならないことを知っている。いつかは救われても、何かの拍子に思い出す痛みが二人に残った。そしてこの痛みは、本編のよっちんと健次郎の苦悩に繋がっているのだ。よっちんは健次郎を許しきることも憎みきることもできずにいるが、二人とも救われるためにはこの状態を続けるしかないという判断だろう。許してしまえば誰も(読者ですらも)満足できないだろうし、憎めば健次郎が救われるだけだから。健次郎は許されるよりも恨まれることの方を願っているだろうし。