日頃の忙しさの中でつい見失いがちな自分の故郷の素晴らしさと、その故郷で大人に見守れて過ごした少年・少女時代の時間のかけがえのなさに気づかせてくれる、実に素晴らしい映画だ。
東京からの転校生を含め、7人しか小・中学生がいない村。しかし、本作では村中が家族のような絆で結ばれ、四季の美しさに恵まれた、理想郷のように描かれている。行動を共にする小・中学生はまるで本当の兄弟姉妹のようだ。多少言葉で傷つくことはあっても、大きな問題にはならない。主人公(そよ)は最年長のお姉さん。そのお姉さんに甘える最年少のさちこの表情のかわいいこと。私の場合はもっと年齢幅は狭かったが、忘れていた子供時代の記憶が蘇る。
7人が海水浴に行く場面は、「スタンド・バイ・ミー」を連想させるが、本作はそれだけにとどまらない。そよは東京への修学旅行や中学卒業を控えて、自分がそれまで過ごしてきた村や時間がいかに恵まれていたものであったかに気づく。「もうすぐ消えてなくなるかもしれんと思やぁ、ささいなことが急に輝いて見えてきてしまう」。このそよの独白が本作のテーマを集約しており、そよがそういう自覚に至る時間が穏やかに映画の中を流れる。中学卒業の日に黒板に頬をよせ、さいならとそよが別れを告げた後、窓から射し込む光で明暗が微妙に変化する無人の教室をなめるように映し、窓に至るとそこには高校の制服を身に着け、過去をいつくしむように教室をのぞいているそよがいるラストは、名カットだ。
最後に、子供たちだけでなく、大人役の俳優の演技、特にそよの母役の夏川結衣さんが良いことを付言する。