大正末期から昭和初期にかけて書かれた寺田寅彦の災害関係随筆を集めたもの。東日本大震災後の2011/6にまとまられた、悪く言えば便乗本だが、元ネタが良質なこともあってか良くまとまっている。
中身であるが、一言で災害といっても地震、台風、火災、津波、など取り上げた範囲は幅広い。つい、地震や津波のところに目が行ってしまいがちだが、さすがに寺田寅彦だけのことはあって、それだけではなくなかなか含蓄を含んだ内容だ。
冒頭付近の例で言うと、たとえば;
P28あたり、「・・・ラッシュアワーの電車の乗降に際する現象を注意してみていても・・・(中略)・・・東京市民は、骨を折ってお互いに電車の乗降をわざわざ困難にし、したがって乗降の時間をわざわざ延長させ、車の発着を不規則にし・・・」
80年前の日本はこんなだった。今でこそ、中国では電車の乗るとき並ばない、なんて笑ってるが。
P41あたり、「・・・誰の責任であるとか、ないとかいうあとの祭りのとがめたてを開き直って子細らしくするよりももっともっと大事なことは、今後いかにしてそういう災難を少なくするかを慎重に攻究することであろう・・・(中略)・・・しかし多くの場合に、責任者に対するとがめたて、それに対する責任者の一応の弁解ないしは引責というだけでその問題が完全に落着したような気がして・・・」
これは、柳田邦夫が50年後にも言い続けなければなかったことと同じである。
地震、津波、から離れてみても、防災、安全確保、といった観点の良書であることは間違いないだろう。