その独自の制作スタイルゆえ残されていたと思われる膨大な記録から、ひとつひとつ事実を拾い出しては、それを紡ぐようにして描かれた勝新太郎のなんと魅力的なことか。その名前を見ても「座頭市」のイメージか、大麻をパンツに隠して捕まった時のイメージしか出てこない私にしたら、全く想像外の姿。でも、それが実像なのだというのが、なんともリアルに感じられるのは、やはり「事実の積み重ね」の強さゆえか。
本著の主人公はあくまでも勝新だけど、周囲のスタッフの魅力をも感じさせる場面が多々あるのも良かった。例えば、とある撮影で画面に物足りなさを感じた勝が「雪が足りんな……」と、照明の中岡源権に雪のありそうな場所を尋ねる場面。具体的な地名を挙げれば、間違いなく一行を引き連れそこに向かうであろう勝新という人物を熟知していて、福井という地名を出す中岡の「共犯者」っぷりとか。何をさておいても、ぐいぐいと読まずにはいられない好著でした。