奈良時代末期を舞台にしたミステリー+ファンタジー+歴史小説。日本史の教科書の中でしか知らず、私には馴染みのなかった奈良時代が、生き生きとした人物造形と情景描写で身近に感じられました。聖武天皇から桓武天皇までの時代、東大寺の大仏建立、正倉院への宝物献納、恵美押勝の乱、道鏡の陰謀などを題材に、主人公夫婦の正義感あふれる活躍を、明るく色彩豊かに、そしてユーモラスに描いています。
タイトルどおり、作品の要所では冥界と現世が二重写しで描かれています。その描き方は、「私」という存在が流れめぐる「気」のかりそめの凝集であるという東アジア的な思想に支えられていて好感が持てました。歴史の勉強を無味乾燥な固有名詞の暗記と思っている高校生に読んでもらいたい一冊です。