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147 人中、125人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
天文学、数学、中国暦の理解不足が残念,
By
レビュー対象商品: 天地明察 (単行本)
『天地明察』は大変楽しく読みました。渋川春海と彼を取り巻く人間模様、改暦にかける情熱など、読んでいて爽快でした。但し、天文学や数学、暦学への理解不足を諸処に感じたのが残念でした。更に中国の暦についての認識不足は免れません。 授時暦は天下の名暦ですが、食予報においては宣明暦が優れていました。だから第一回目の競争は上手くいかなかったのです。また実際のところ、中国の暦ではマテオ・リッチの後輩のイエズス会の宣教師等が中心となって明朝末期に編纂が開始され清朝初期に頒布された「時憲暦」以前、「食」を分秒単位で当てることはできませんでした。それを可能にしたのは西洋天文学です。本書にも僅かに『天経或問』を入手して西洋の視点を取り入れた記載がありますが、大和暦が宣明暦と授時暦と食予報で優位に立てたのは、マテオ・リッチが中国で紹介した西洋天文学の知識を渋川春海が取り入れたのが大きいと思います。 とはいえ、天文学や数学に相当通暁した専門家でもなければ、この本に書かれた内容の全てを完全に正しく書くのは困難でしょうし、専門家がこの爽快な人間模様を描き出せるとも思えません。むしろ難しいジャンルに挑戦した作家の勇気を称えたいと思います。もし可能なら改訂時に学術的な視点からの解説を専門家に補ってもらえたら、読者としては嬉しいです。
90 人中、75人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
天地明察,
By 吉 - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 天地明察 (単行本)
すばらしい作品です。近年のエンターテインメント作品の中でも秀逸。 他のレビューにあるように、登場人物に重厚さがないのは、ひとえに、主人公、渋川春海の性格ゆえだろうと思います。陰りがなく、ひょうひょうとしていながらも、熱をもって改暦のために粉骨砕身した春海の姿勢が、本来なら重厚な、重々しいものとなるはずだった本書に清々しい気を通していると感じます。そして、春海をはじめ、彼をとりまく人々の非凡さと英断、徹底した謙虚な姿勢には主人公に感じるものとはまた違った感動がありました。 さらに、「暦」という日本独自のものを題材にしている点、そしてなにより、物語の「おもしろさ」が、読むスピードをゆるませません。p.500近い長編ですが、「飽き」というものがありませんでした。 一人の人間が、「天地」というあまりにも巨大なものに勝負を挑む姿勢に涙しました。あまりにも、熱く、激しく、美しく、潔い・・・そういう勝負です。 合戦も斬り合いもありませんが、まさしく「命」を掛けた真剣勝負が繰り広げられています。 是非、彼らの真剣勝負の世界に身を投じてみてください。
79 人中、64人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
解く段取りがむしろ冥利,
By
レビュー対象商品: 天地明察 (単行本)
本書で使われている「明察」という言葉は、算術の解答が正しかった場合につけられるので、「大変よくできました」的な意味合いがあるのだろうし、本来の意味的には「事実を見抜いた」となるのだろうが、ボクはこれに、証明終了を意味する「Q.E.D.」という言葉をあてようと思う。なぜなら、誰かに認められるという意味よりも、自らが成し遂げたという充実感を、より強く持たせたいと思うからだ。この作品の主人公となるのは渋川春海、本来の名を安井算哲という、本因坊道策と同時期の、将軍家お抱えの碁打ち衆の一人である。そうは言っても、囲碁の話がメインなのではない。彼が成し遂げる改暦と、それにまつわる人々の姿が主役である。 彼が活躍した江戸時代の初期、日本では宣明暦という、八百年余むかしに伝来した暦を使用していたらしい。しかしこの暦の一日は、実際の一日とわずかにずれており、そのずれは四百年で丸一日にもなってしまう。これでは実用上、色々と差しさわりが生じてしまう。 徳川の御世になったとは言っても、日本における権威は朝廷にある。しかし朝廷は、長い怠惰の間に暦に関する技術を失伝しており、それを隠すために暦を改めることを認めようとはしない。この状況に立ち向かうべく、数々の第一人者が期待したのが春海というわけだ。 だが、彼は才気煥発の天才にも描かれないし、抜群の行動力を持つ英雄の様にも描かれない。どちらかというと、慣れない二刀を腰に佩いた、やさしいけれど頼りなさげな人物に見えるし、それ以上に周囲に集う人々が綺羅星のような実力をもって輝いている。特に中盤は、保科正之の、武断の世から文治の世へと舵を切る名君ぶりが目立つ。 しかし、そんな彼だからこそ、天地を明察し、誰も切りつけることが叶わなかった権威の壁を破ることができたのだろう。なぜなら、改暦のためには様々なものがいる。算術の技術や天測の記録、お金や人材、そして物事を滞りなく進めるための人脈などである。数多くの第一人者からそれらのものを受け継ぎ、その想いを背負うことによって成長した春海が、碁打ちの本領たる先を見通す布石により、大逆転で事業を成し遂げる様は圧巻である。そんな彼を支えたえんとのエピソードも興味深い。
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