もう一冊の短編集「ムギと王様」と合わせて、手元に置いておきたい一冊。
宝石のような物語たちが詰まっています。
宝石よりももっとつつましくて、朝露にぬれたスグリの実のよう、とでも表現したくなります。
中の「サン・フェアリー・アン」を読むと、どうしても胸が詰まって涙があふれてしまいます。
がまんしてがまんして涙がこぼれないようにしかめっつらしていた女の子のこころが、やさしいひとのぬくもりに包まれたとき、読んでいるこちらは女の子の気持ちになると同時に、見守るおとなの気持ちからも「ああ、よかったね、よかったね」と思えるのです。
「サン・フェアリー・アン」は人形の名前であると同時にフランス語の“Ca ne fait rien”サ・ネ・フェ・リアン=どうでもいいさ という意味で、第一次世界大戦時にはやった俗語だそうです。
こんなかわいらしい響きの人形の名前に、何代にもわたってかいくぐってきた人の歴史がこもっていたなんて!
ファージョンの天才ぶりには、何度読んでも本当におどろかされます。
たぶん、人生の大切なことはなにもかも、つまっているんじゃないかな、という気がします。
そして、読みおわるとかならず、目の前の世界がいとおしさを増している、そんな感じです。
心が疲れたら、この本を少しよんで寝ると、ささくれ立ったこころをサセックスの風がやさしくなでて治してくれます。