正直、ちょっと驚いたかもしれない。もちろん、結末にではない。
読んでいる途中でラストまでばっちり予測できてしまう。
おそらく誰でも予測できてしまうだろう。所謂あっと驚くような
展開はないのである。だがきっと、これはこれでいいのだ。
疑似体験ができる小説なんだろうなと思う・・・たぶん。
少なくとも私はできた。主人公の体験を通して安らぎを得ることができた。
そしてラストで「明日からまたなんとかやっていけるさ」ってな
気分になれた。断っておくが別に陰鬱な気分だったわけではない。
冒頭の、主人公が仕事の悩みで思いつめてるシーンなんて
なかなかリアルである。こんなことは誰でも経験があるんじゃないだろうか?
それが自殺の決意まで行くかどうかは別にして。
この主人公の悩みに共感できるから、読者は主人公と自分を
重ねることができる。そして主人公の小さな冒険へダイブ。
こういった類の小説に「あっと驚くような展開」はたぶん無用で、
読者が望む予想通りの安らぎを与えることこそが必要なんだろう。
薄い本で本当にするっと読めてしまう。でも、薄いからするっと
読めるわけではない。文章が素直な感じ。あっと驚かせるものでも
奇をてらったものでもしかつめらしくもなく、ただ流れるような素直な文章だと思う。
そしてそのするすると流れるような文章が、美しい景色の描写や、
登場人物の飾らない優しさに不思議とマッチするのだ。
だから物語にするっと溶け込めて、主人公に共感できて、
ラストでも素直に良かったねと思えるのだ。