子どもの成長にとって、夢を満たしてくれ、あのような大人になるのだと目標となるようなヒーローの存在は必要である。この世で一番美しいと言われている青い蝶、ブルーモルフォに魅せられた主人公の少年、ピート・カールトンにとって、その青い蝶との出会いを運んできてくれそうな昆虫学者アラン・オズボーンは、まさにヒーローである。
子どもの成長にとってヒーローは必要であるが、そのヒーローは、必ずしもオールマイティで完璧な資質や力量の持ち主でなくてもよい。むしろ、アランのように弱さを併せ持ち、それゆえに悩み、それを素直に吐露できるようなキャラクターであるほうが望ましい。この世に完璧な人間はいない。人はそれぞれに、弱さや哀しみを抱えながら生きている。このようなヒーローの描きかたが、わたしにはとても好ましく思えた。
このアラン・オズボーンを演じているのは、ウィリアム・ハート。彼が出演している映画は『愛は静けさの中に』('86年)、『母の眠り』('98年)、『太陽の雫』('99年)など何本か観たがどの作品でも、内に秘めた哀しみがにじみでるような味のある演技をしていて好ましく思っていた役者である。本作でも、昆虫あみの使い方を示すダンスのシーンを含め、なかなか好演している。
映像は、日ごろあまり昆虫に縁のない大人の鑑賞者でも惹き込まれるほど美しい。この映画のおそらく主題であろう「この世の生きもののすべてが命の神秘のひとつである」というメッセージもきちんと伝わってくる。ピートと同年齢(10歳ぐらい)のお子様も含めてファミリータイムのご鑑賞にぜひおすすめしたい1本である。