ウィリアム・ブレイクの「天国と地獄の結婚」へのアンチテーゼとして書かれたのは有名である。何故「天国と地獄は離婚しなければならないか」を現代―それは人間存在を無批判に称賛する人間中心の世界であるが―に生きる私たちの多くは首をかしげるかもしれない。
これはトールキンの「指輪物語」やルイスの「ナルニア国物語」らと、ハリー・ポッターの世界観の違いを説明する事と同じだ。その答えは「光は闇と同居できず、白と黒は分けられねばならないから」である。
ハリー・ポッターは白と黒、善と悪の対峙する世界観ではなく、それらが混ざる灰色の世界観だ。灰色の善悪入り混じった世界の中で、そのままのあなたが自らの力でその世界を救い、自他を救えるという世界観である。言い換えるなら「あなたは白黒と善悪をつけずとも、灰色の世界で生きて灰色の世界を救い得る存在で、世界もあなたも灰色で良い」とする。聖書はそうは言っていない。際立つのはC.S.ルイスの聖書信仰に立った上での、この世界の現実を見極める世界観であり、その基盤にある聖書に堅く立った正統的神学の理解である。ナルニアへの扉は彼の頭の中では、この五年前に既に開いていたのだ!
ルイスの「ナルニア国物語」、「キリスト教の精髄」に通じる、読み手に聖書へと関心を向かわせる良書である。
ルイスの著作は翻訳者によっては、読んでいて飲み込みにくいゴツゴツした翻訳もあるが、この本は「キリスト教の精髄」と同じ柳生 直行氏であり、非常にスムーズだ。寓意物語としても秀逸。物語好きにも楽しめる。
もちろんキリスト者にとっても信仰の糧になり得る書物である。