先に後著の「ガンに生かされて」を読んでいたので、この小説が出来上がった背景がよくわかり、味わい深かった。「ガンに・・」に書いてあるように、純一のモデルになったのは実在の医師、そしてシュージのモデルは著者自身であることがわかる。小児ガンの愛ちゃんのモデルがいたかどうかはわからないが、脇役だが重要な役割を果たす、天使のような存在。
舞台はがんセンターで、著者が入院中に構想を練ったのだろうと思うが、周囲の患者や医師たちへの洞察が冴えている。暗い背景にもかかわらず全体にコメディタッチなのは、著者の生前の性格がにじみ出ているのだろう。発想も奇抜でおもしろかったし、構成もうまいと思った。
最終章はとりわけ感動的で、著者自身がこれから迎えるであろう人生最期のときを想像しながら描いたことは間違いない。シュージの最期の語りの中に、著者自身の悟りが含まれている。「ビジネスや家、車、そんなものは、いずれは朽ち果てていくもの。結局自分が死んでから残るものって、“人に与えたもの”それだけだ」
私はよい作品だと思ったが、「奇蹟のラブストーリー」という宣伝につられて買った人には、期待はずれなのかもしれない。出版社はキャッチコピーをもう少し考えた方がいい。