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天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡
 
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天使はなぜ堕落するのか―中世哲学の興亡 [単行本]

八木 雄二
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

中世といえば暗黒時代。中世哲学は煩瑣哲学と揶揄され無視されてきた。だが、それは単に無知であるにすぎなかったのだ。古代哲学の遺産とキリスト教の巨大な影響、現代とはまったく違った世界観を背景として、理性を頼りに構築された哲学の大聖堂を、神の存在証明と天使の堕落を軸に一挙紹介。普遍論争をはじめ、現代哲学を先取りする知識論、経済の基礎となる利子の正当化、「概念」という概念そのものの発明など、知られざる中世哲学の偉大な成果を、アウグスティヌスやボエティウスから、スコラ哲学の父アンセルムス、アベラール、トマス・アクィナス、革命的天才ヨハニス・オリヴィ、ドゥンス・スコトゥス、そしてオッカムとエックハルトにいたって終焉の刻を迎えるまでを丹念に描き、これまでの哲学史の常識をもくつがえす知見に満ち、現代思想にも巨大なインパクトを与えずにはおかない革新的論考。

内容(「BOOK」データベースより)

普遍論争、現代哲学を先取りする知識論、経済の基礎となる利子の正当化、「概念」という概念そのものの発明など、知られざる中世哲学の偉大な成果を、神の存在証明と天使の堕落問題を軸に、哲学史の常識をくつがえす新たな知見をちりばめて一挙に紹介。現代思想にも巨大なインパクトを与えずにはおかない革新的論考。

登録情報

  • 単行本: 593ページ
  • 出版社: 春秋社 (2009/12/22)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4393323300
  • ISBN-13: 978-4393323304
  • 発売日: 2009/12/22
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.4 x 3.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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21 人中、17人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
 キリスト教徒の西洋人の手になる、それゆえわれわれには気づきがたいバイアスも多い中世哲学の通史執筆に挑んだ著者の「蛮勇」に拍手を送りたい。権威や定説への盲従ではなく、テクストそのものに真摯に向き合わなければ傾聴するに足る見識は生まれないという好例である。大きなスコープを提示するのが主眼だから、モノグラフ的な精緻さに欠けるのはしかたがない。背景となる一般史への目配りや日本との比較文化的観点が、本書の場合、蛇足ではなくむしろ美点となっている。やや目立つ繰り返しや頻繁な改行も、苦しい思索の跡を留めるものと好意的に解したい。
 望蜀を言えば、科学史やイスラーム哲学に手薄であり、ビザンツ思想の寄与には言及がないという点、読書案内が本文の濃密さに比して貧弱だということ、それに主要な人名索引くらいは付けてほしかった。中世とルネサンスの関係という大きな主題、新プラトン主義の裏街道という知られざるトポス、ヨハネス・エリウゲナやアルベルトゥス・マグヌスといった魁偉な人物にも光を当ててほしかったが、今後に期したい。
 「ラボアジェ」(490頁)は「ラヴジョイ」の誤り。ケアレスミスが散見されるのは惜しい。
 
このレビューは参考になりましたか?
19 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本|Amazonが確認した購入
哲学に対する嗅覚に優れた著者は中世ラテン語世界の洞窟の中で、低い天井に頭をぶっつけたり、岩と岩の間に身をよじって進んで行き、とうとう、中世神学から近代科学に抜けるメイン・ルートがトマスではなくて、実は、アンセルムス、アベラール、最近発見されたヨハニス・オリヴィ、スコトゥス、オッカムの流れであることを嗅ぎ取ってみせた。
昨今までは、トマス・アクィナスの神学は秩序を重んじる主知主義なので、必然の法則で全てを説明しようとするニュートン力学の世界観にマッチしており、伝統的にも主流であった。これに対して、スコトゥス神学は自由意志を重んじるので、偶然の要素を排除しない。偶然は秩序の乱れではなくて、必然と同様に神の能力を基盤としている。こちらの考えは量子力学・複雑系・免疫学にも受け入れられ易い。蛇足だが、「ユーザー・イリュージョン」にも目を通せば、スコトゥスの現代的意義がより明確に理解できるだろう。
翻って見れば、トマス・アクィナス派(ドミニコ会、心身二元論、自由の根拠を知性の判断力に帰する主知主義;cogito ergo sum.)とスコトゥス派(フランシスコ会、心身一元論、自由の根拠を意志の能力に帰する主意主義;volo ergo sum.)の対立は新プラトン主義とストア哲学の対立でもあった。

オッカムは“神が目的とする事柄は結局人間には測り難し“と見なして神学に終焉をもたらした。それと同時に、彼が近代科学の基礎を哲学的に作り出した。利子を哲学的に正当化して複式簿記を生み出したのもフランシスコ会である。ここから行動化(acting out)が始まった。即ち、産業革命以来、人類は科学技術の傲慢によって、糸の切れた凧同然に、うかれ迷い、何事も暴力的にしか対処できなくなってきた。この事態に対する解毒薬は、「如実に自心を知る」ことである。勿論、神から御許し頂ければ、の話だが。
著者の嗅ぎつけた道を逆にたどれば、近代的諸概念の由来をさかのぼって理解できるので、我々の頭を冷やすことができる。少なくとも評者には、本書を読み終えた後には、以前には分からなかった多くのことが、少し分かるようになった気がする。
このレビューは参考になりましたか?
38 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
中世の哲学に就いて、半可通どころか無知蒙昧な当方とすれば、これまでは本書著者の『中世哲学への招待』や山内志朗の『普遍論争』などをペラペラ捲るのみ。

本書はそのいなせな(?)高踏的なタイトルの印象とはニュアンスが異なり、またその外形(600頁近い大冊)にも拘らず、最も優れた中世哲学入門書であろう。そして、少し本書を読んでみればわかるが、これは近代哲学への階梯にもなっている。

それにしても平明達意の文章! 親しみのない固有名詞や神学理論が頻出する書物であるのに、どうしてこれだけスイスイ読めるのか? エッセイの如し。そういう言い方は本書を貶めるものではなく、特殊専門的な哲学論を扱っていながら、一般的な読者にも疎外感を与えないまことに優れた文章なのだ。

ご案内のとおり中身は評価できないが、本書が近代哲学への手引きにもなろうというのは、著者がさりげなくあとがき(「おわりに」)に書いている一文をその取っ掛かりとして引いておこう。

<デカルトが書いた『省察』などは、中世の一流のレベルから見たら、検討にすら値しない内容のものである。大学生の卒論程度なのである。>(p585〜6)

おお! スゴイ!! それでは進歩とか、精神とか、思想とかは一体何なのか?

本書は繰り返し読むに耐える秀逸な思索の書でもあって、象牙の塔の特殊な隠者が弄ぶ(かに見える)言葉遊びとは全く異なる(評者はそういうものにも敬意を抱いているが)。

本書は2009年12月に刊行、年内に購入していたが、一般紙の柄谷行人(朝日)、川上未映子(読売)書評を見て、おそるおそる読み始めたのだが、これは評者にとって2009年発行の書物ではベストワンであった。
件の書評自体は、評者のクズレビューと大差ないつまらないものだったが・・・・。
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