登録情報
|
男勝りの性格で決して美人ではない保安二課の刑事・河野明日香は、日本全土を席巻する麻薬組織「クライン」の元締め・君国の愛人で美貌を持つ神崎はつみを警察への護送する途中、「クライン」に襲われる。多数の銃弾を撃ち込まれたものの脳は生きている明日香、そして、ただ一発の銃弾が脳を撃ち抜き、体は生きているはつみ。保安二課長・芦田警視の計略により明日香の脳がはつみに移植され、君国をおびき出す囮としての特殊任務をおびた「アスカ」が誕生し、明日香の婚約者であり元同僚の仁王とともに「クライン」と戦う。
「アスカ」の誕生から4年余りが過ぎ、神崎アスカは関東信越厚生局麻薬取締部麻薬取締官!として働くようになる。「アスカ」が「河野明日香」であることは警察の特秘事項となり、美貌を手に入れたものの著しく戦闘能力の落ちたアスカは、閑職に回される。しかし、ある事件をきっかけに元婚約者・仁王こと古芳との最強のコンビが復活し、狼と呼ばれたロシアからの殺し屋と、その裏に潜む巨大な組織と戦うことになる。
この殺し屋は、ある理由から「アスカ」に強い関心を抱いており・・・
「天使の牙」同様、ハードなアクションが展開される本作は、スピード感にあふれ、秀逸なハードボイルド小説となっている。「脳移植」という(現時点では)非現実的なところに拒否反応を覚える方もいるだろう。かくゆう私も同様の理由で前作「天使の牙」を読むのを後回しにしていたが、ひとたび読み始めてしまう'''全く気にならず、むしろ作品の面白さを格段に増している。
是非お勧めの一冊である。
ただし、前作を読まずに本作品を読むと登場人物の背景の把握が十分に行えず、アスカや仁王の感じる葛藤を十分に理解することができないため、本作品を十分に堪能できないと思う。前作も一級のハードボイルドであり、読んで損のない一冊である。まず前作を読んでから本作を手に取ることをお勧めする。
脳移植をうけ外見が変わったアスカが仁王との関係に苦悩する。ハードアクションでありながらもそんなラブストーリーが随所に盛り込まれ全体のイメージをハードボイルドからソフトにしている。男女間の心の葛藤もまた読みどころ。「牙」読者にはアフターバーナーなんて言葉も織り込まれているのでさらに入りこみやすいかも。
メインとなってくるもうひとりの移植者「ヴォールク」。悲しい過去を背負いながらも、まさにソルジャーであり、武装警官をことごとく殺戮していく(ふがいないんだな、これが)。アスカとは共鳴していくという部分がまた性なのか宿命なのか。また警察とのやるとりは大沢氏の「新宿鮫」でも取り上げられるキャリアとノンキャリアの見えない確執。これがアスカの行動をはばむ原因のひとつで、新宿鮫と同じく体質への皮肉だ。全体としては新宿鮫は「静」、天使の爪は「動」のイメージ。読者層としてはそこが分かれ目かもしれないがどちらにせよ深い内容であることには違いない。ロシアにCIA警視庁に麻取と複雑、個人レベルではない関わり方が結構深いのだ。
下巻で暴走し始める「ヴォールク」の狂気。愛すべき主人公アスカ。さながらサスペンスアクションinラブストーリーの大沢作品は新宿鮫の鮫島に匹敵するシリーズ化必至のキャラクターを育てている。
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|