私も「もののけ姫」テーマに惹かれファンになったクチだが、男性なのに、いや男性だからこその美しく力強い女声に魅かれ、10年来声援を送っている。
米良さんは非常に身体が小さい。平均的女性よりもさらにふた回りは小柄だ。肉体そのものが楽器の声楽家には致命的であろう。だが大ファンだからこそ、そのことに触れるのは失礼だと心得ていた・・・つもりだった。
だから、そのタブーとも言える過去の苦悩を自らここまで告白してこられるとは、正直思いもよらなかった。「本を出す」と伺ってはいたがまさかこんな内容だとは・・・。
悲壮な体験を忘れたい、過去と訣別してまったく新しい自分になりたい、と切望するひとは多いだろう(私もそのひとりだ)。華やかなスポットライトを浴び、世界じゅうを駆け巡っている米良さんのようなひとなら尚更だ。「過去を知られたら絶対普通に扱ってもらえない、必ずそのイメージでしか語ってもらえなくなる」と慄いていた気持ちは十二分に理解できる。
だから、今こんな告白をするのは「後出しジャンケン」かもしれない。しかし、それさえもできずに苦しむひともいると考えると、決して卑劣な行為とは思えない。むしろ、そういうひとたちに限りない勇気と希望を与えてくれるものだと思う。
弱者の立場にいる米良さんだからこそ、「いじめはいけない、自殺もいけない」という、誰もが「綺麗ごと」と切り捨てる言葉も美しく輝くのだ。他人を省みることができない、そうしようなどとは夢にも考えない、そんな連中にこそ、襟を正して読んでもらいたい・・・と熱望したいが、ムリか・・・。
人生や人間社会の酸いも甘いも噛み分けた、というお歳では決してないのに、これほど心揺さぶられた人生論を他に知らない。もし本書を「タレント本」と十把一絡げに括ってしまう輩がいたら、私は絶対に許さない。それくらいの価値がある1冊だ。星を5つ“しか”つけられないのが非常に残念! 星10個でも足りない、というのが偽らざる気持ちである。