歴史小説ファン、特に、戦国時代のお好きな方々、掛け値なしの傑作です。今更、「川中島の戦い」か・・・と、憂うことなかれ。海道氏の手によって、全く新しい「川中島合戦記」に仕上がっています。
海道氏は、デビュー作の“真剣”がハンパじゃなかったので、その後、こちらの期待を上回る作品がありませんでした(もちろん、平均点は軽くクリアしていますが・・・)。
しかし、この作品は凄い!無条件で面白い!
「信玄VS謙信」を描いた小説は、これまで、どちらかの“目線”で語られることが多かったと思いますが、さすが、海道氏。実に、フラットに二人の“御屋形様”の心象風景を描き切っているので、一方に肩入れすることなく、楽しむことができます。
冒頭から、まるで自分も「川中島」にいるような臨場感に溢れていて、約600ページを一気読み、間違いなしです。何しろ、謙信の出兵から合戦終了までの“約一ヶ月間”という“短期間”にも関わらず、600ページ超。歴史小説で、こんなに贅沢に“時間”を使った作品は、他に記憶がありません。
“二人の御屋形様”と双方の家臣たちが行う“絶妙な掛け合い”を通して、この戦さに対する“双方の必然性”が語られていく、という描写形式に徹底しています。そして、伝説の「謙信の一騎駆け」で幕を閉じるという、王道。
最初は、違和感を感じた、天海大僧正と徳川秀忠・家光父子の登場も、海道氏の“深謀遠慮”だと解り、小説は「最後まで読まなきゃ駄目」だという、自分自身の原点回帰にもなりました。
帯の「こんな川中島合戦、誰も読んだことがない。」という宣伝文句にも、素直に肯ける納得の一冊。必読です。