その昔、あすかコミックス他で出版された名作たちが次々と蘇ります!
十年程前に手放してしまったのを後悔していましたので、本当に嬉しい。
●天人唐草●厳格で男尊女卑の父に「女とはこうあるもの」と育てられた女性の悲劇。
(1979) 『失敗をおそれる彼女は もう一度やりなおすということができない子どもになっていた』
冒頭の狂気に囚われた主人公の登場シーンは、山岸先生が実際に遭遇した光景だそうです。
よしながふみ先生絶賛の作品でもあります。主人公の生育歴に共感する女性も多いでしょう。
●銀壺・金鎖●共に伴侶と子供を捨てて一緒になった男女。其々の家庭の3人の子供の回想。
(1988) 『父にとっての母の優位性』『母も僕も全く抹殺された世界』『母の二の舞をしそうで』
東郷青児画伯の名前がほぼそのままで使われていますが、事実ではなく山岸先生の妄想とのこと。
ラストで、置き去りにされた娘が、母と自分を親子としてでなく同じ女として比するのが哀しい。
●シュリンクス・パーン●編集から逃げ叔父の遺産の家へ移った若手作家が出会った精霊。
(1976) 『なんと異常な話だろう 叔父は自分の厭世感をあの小さな子にまるのみさせたのだ』
山岸作品にはギリシャ神話と日本神話がとにかく多い気がします。
懐かしいなーと思うとともに、今の子は神話なんて読むのかな?と思ったりもします。
●負の暗示●日々の鬱憤を募らせた男の爆発は、ひと村を飲み込み壊滅させた…。
(1991) 『いつのまにか 世の中は自分を中心に回っているという感が強くなっていた』
横溝正史作品で映画化もされた「八ッ墓村」のモデルになった事件です。
事件も怖ろしいけど、戦争時の報道規制のため知る者が少ない、というのもまた怖い。
●悪夢●ある女が何度も何度も見る悪夢…法廷、少女の自分、妙な学校…これは一体なに?
(1980) 『気にすることはない みんなきみが女の子なので珍しがってるだけさ』
こちらも実際の事件をモデルにした作品。女性の若年犯罪者は稀なんですよね。
日本には終身刑もありませんし、未成年者には非常に量刑が甘い。作中との差に驚きました。
●星の素白き花束の●夢見がちな挿絵画家の前に現れた美少女の異母妹…その異常性とは。
(1986) 『いまここに私は自分の少女趣味を思う存分駆使できる分身を見出したのでした』
これも忘れ難い作品。テーマは『蛭子』に似ています。独身で画業の主人公も多いですね。
美しい皮を被った俗悪な魂…山岸作品で、蛇の化身のような少女を引き取る話…にも似てます。
●蜃気楼●妻には妻の、愛人には愛人の、違った魅力を求める身勝手な男の末路。
(1990) 『だけどわかった? 自分がやられて厭な事は他人も厭なんだという事に』
主人公が男性の作品は稀ですが、この『蜃気楼』と『負の暗示』が一、二を争う名作かと。
男が自分の身勝手さから目を逸らし続ける点も似ている二作品です。
●流々草花●山岸先生のデビュー前後の思い出が綴られたイラストエッセイ。
(1986) 『少女マンガ家になるには2つの条件があってね 頭がいい事 ブスである事』
怪談でもペットの話でもないエッセイは珍しいのではないのでしょうか。
それにしてもこういう素敵なタイトルをどうやってつけておられるのか、それが気になります。