「同時通訳が見た」との帯から、電力業界の内情が垣間見えるのかと思い読んでみました。
確かに、国際交渉の現場の雰囲気が伝えられていて、日本人の知らない世界も描かれ大変面白かったです。その点では一見社会小説のようでもあります。
しかし、それ以上に、私は人、物、花、木、季節、ものごとに対する作者の細かい感受性に感動しました。私小説的思索が深く感じられます。
女性の観点から見た世界のゆがみがさり気なく表わされ、高教育が何をもたらすものかということへの省察もあります。
外国企業に勤めながらも、日本人であることにアイデンティティを求めていく主人公の心情が、グローバル化の世界に生きる人間の一面を浮かび上がらせています。
原発をテーマに現代の世界の仕組みと個人の関係に切り込んだ意欲作として一読に値します。