『2001年宇宙の旅』等で有名なSF界の巨匠クラークの最も脂の乗りきった三十代に書かれた全14編収録の第四短編集。硬軟取り混ぜた中短編が並び、決して難解では無くSF初心者にも安心してお勧めできる傑作集だと思います。
表題作『天の向こう側』と『月に賭ける』は、宇宙に船出して行く人類の苦難の日々が、不意に遭遇する事故や微笑ましいユーモア溢れる出来事等の人間ドラマの数々を通して回想されます。
『機密漏洩』『その次の朝はなかった』『宣伝キャンペーン』は、地球外生命体との不幸な遭遇がブラックユーモアで味付けされています。
『90億の神の御名』ヒューゴー賞受賞作『星』『太陽の中から』『諸行無常』は、人類の終末テーマが神(宇宙)の視点から抗い難い宿命として描かれます。
最後の『遥かなる地球の歌』は後の長編の原型作で、宇宙時代の男女の愛をテーマに、ほろ苦く哀しいけれど誠実なラストを迎えます。
全編を通じて殆ど悪意は存在せず、宇宙への進出に向けて邁進する人類の姿勢が感動を呼びます。それから私的には、宇宙から地球を眺めるシーンの描写が印象的で、映像に負けない文章表現の喚起するイマジネーションに作者の力量を改めて感じました。