ちょっと音楽が好きな方なら、夢中になれる作品です。
冒頭、小さな少女が、プロのオーケストラを相手に、ベートーヴェンの交響曲第4番を、ほとんど振り切る場面があります。
しかも打ち合わせ無しだし、暗譜だし、ノリの悪いホルン奏者に指示まで出すなど、当初はかなり引きました。
こんな少女に、そこまでの事が出来る訳は無いと、思ってしまいました。
しかし、読み進むと、その事実にも納得が出来る様になります。
その時指揮をしたのが、主人公の曽成(そなり)ひびきです。
その場に居合わせて、後に音大でヴァイオリンを学ぶ事になる久住秋央(くずみあきお)は苦悩の連続です。
同じ音大の指揮科に入学したひびきの弾く交響曲のピアノアレンジや、ピアノ伴奏に魅了されてしまって、自分を見失います。
秋央の苦悩ぶりにも共感出来ますが、今後、自らの音楽をつかんでゆく事が出来るでしょうか?
ひびきには、指揮者に必要な素質で溢れています。
初対面のグループにもすぐに溶け込み、人の輪の中心になってしまいます。
自らが演奏するのではなく、そのサポートをするだけで、演奏者は高みに押し上げられます。
一音楽ファンが、プロの世界を覗く事が出来るのも面白いです。
酔って、ひびきがピアノで弾いたのが、シューマンの交響曲第2番というあたりも、著者の芸の細かさを感じます。
音楽ファンなら、この曲が、どういう質のものかを、すぐに連想されるはずですから。
ただ、音楽ファンでなくても、サービス精神旺盛な漫画なので、十分に楽しめると思います。
それにしても、私個人は、音楽を聴く側の人間であり、弾く側の人間でなくて良かったな、というのが一番の感想です。