やっぱり、出来過ぎてる、、、。
俳優原田芳雄、最後の映画主演作にして遺作である今作を観ながら、ずっとそう思っていた。
だってそうでしょう。石橋蓮司や大楠道代ら共演陣、脚本荒井晴彦、監督阪本順治と言った仲間にして同志と呼んで良いスタッフ、キャストに、佐藤浩市、松たか子、瑛太に岸部一徳、小野武彦、小倉一郎、でんでんに三國連太郎までが顔を揃え、引き立て役に廻る。
長野県大鹿村、ここでは300年余の間、町の伝統芸能として歌舞伎が伝承されてきた。
原田の役柄は、ここでは、妻に逃げられた後も、ひとり料理店を商いながら、今も歌舞伎役者として、年に一度主役として舞台に立つ男。
映画は、公演間近に駆け落ちしていた妻が16年ぶりに男と共に村に舞い戻ってくる処から始まる。
突然の妻の出現に狼狽する主人公、更に彼女が記憶喪失に陥っている事が事態をややこしくさせる。
従来のスクリーン上での艶っぽいアウトロー像とは違うものの、不器用ながら拘りを持ちつつ、男気あるキャラがやっぱり原田らしい。
基本的には喜劇である。そして、他ならぬ阪本&荒井コンビ作でもある。
出演者に、例えば「生きてるうちが花なのよ・党宣言」の原田や「喜劇・女生きてます」の大楠が居たからではないが、森崎東作品のような人間臭いテイストになるのかと思いきや、怒りも激しさも猥雑さも抑制された意外なまでにウェルメイドな出来栄えで、飽くまで、故郷と伝統芸能を愛する個性的な人物たちへの人間賛歌になっている。
荒井晴彦脚本だから、間男役の岸部一徳のキャラが際立っていますが(笑)。
そして、阪本順治監督。今作の製作、撮影の経緯は窺い知れないが、監督は容態を知っていたのではないか?
そうとしか思えないような全編湧き起こってくるような原田芳雄へのリスペクトとオマージュ。
「あれっ」って声と共にストップ・モーションで映し出される原田のラスト・ショット。
テンガロン・ハットにサングラス、粋で永遠に不良性感度溢れたその姿を観ながら、そう確信しつつ、胸が衝かれた。
やるじゃないですか、監督。
悲しいけど、これってやっぱり役者冥利に尽きるんじゃないだろうか。
劇中での村歌舞伎の座長としての責務を果たす事が、そのまま、今作の主演俳優としての役目をまっとうさせる事にリンクしていく。
奇しくも、弟分松田優作が癌との壮絶な闘病を隠しながら、ハリウッド映画「ブラック・レイン」の撮影に参加していた事と同様な、闘病を押してのその役者魂に感服する。
存在そのものが幸福な映画。
う〜ん、やっぱり出来過ぎてる。
そして、とにかく、格好良い。