江戸時代の大坂の姿を知ろうとしても活字では理解が難しいですし、カメラのない時代ですから映像もありません。
その意味でも、江戸時代にベストセラーとなったガイドブック『摂津名所図会』に掲載された絵図と文は貴重な史料で、当時を知る上で第1級の情報と言えるでしょう。そんな大阪の名所や名場面から本渡章氏が36景を選び、名所絵を読み解く方法で説明しています。
基本的に見開き2ページで絵図を紹介し、補足の関連した絵を使用して説明をしていきます。本渡章氏は作家ですが、多くの参考文献を利用されたにせよ、大坂の歴史についても過不足なく丁寧な記述でよく分かりました。
現代の姿を知る者にとって、上方の世が目の前に映ろう様は一興でもありました。
道頓堀の賑わいは今以上かもしれませんし、今やオフィス街となった大川沿いの八軒家は三十石船当時の風情が伝わってきます。天神祭の船渡御の大船団は現在以上の壮観さでした。高津神社の境内は現在の姿に近く、有名な落語「高津の富」で現在でも知られています。
内容は、大坂へ来たりし験(道頓堀のからくり芝居「オランダ人を仰天させた人気芝居」、浮瀬の奇杯「浪花の名物料亭が京、江戸にもあった」ほか)、四季の賑わい(今宮の十日戎「海の神はなぜ商売の神様になったか」、住吉の浜「潮干の浜は堺へつづく歩行者天国」ほか)、名所の絵物語(高津宮の仁徳天皇「なぜ、古代の都が名所図会の巻頭に」、江口の遊女「西行と遊女の出会いに謎の琵琶」ほか)、津の国山河(八軒家から熊野「八軒家は聖地への玄関口だった」、安治川橋と海船「安治川橋はなぜアーチを描くのか」ほか)です。