朝日新聞関西版、日刊ゲンダイを始め、いろいろな雑誌や新聞に連載したエッセイを単行本にまとめています。初出で一番古いのは95年ということですから、時事的な話題は時代的な違和感を少し覚えますが、筆者と奥さんの会話の面白さは、まさしく夫婦漫才のようでした。本書の一番の特徴で売りでしょう。
元の単行本タイトルは『よめはんの人類学』で、文庫化するにあたり、それに加筆・修正・改題したものです。
なお、各章の項目などを少し紹介しますと、1 ムササビのよめはん(ムササビのよめはん/ビリーとリリー ほか)/2 原風景(原風景/劣性遺伝 ほか)/3 ベンガイの記(ベンガイの記/関西ネイティブ ほか)/4 食中日記(食中日記/雑食性健忘症候群 ほか)/5 この国のカタチ(この国のカタチ/抑止力 ほか)
黒川博行さんは、ハードボイルドやミステリーを量産している作家ですが、その日常の面白さは、小説とは違う趣きが漂っています。お笑いのメッカ・大阪でご夫婦とも育ち、生活しているわけですから、笑いのセンスは一級品です。
本書の随所に二人の会話が登場しますが、どの話も見事なオチが付いています。日常の出来事なのですが、まるでそれらが漫才やショート・コントのようで、会話のテンポが秀逸でした。この笑いのセンスは、関東と関西の違いもあり、生活環境の違いで受け入れにくい人もあるかもしれませんが、ページごとにこれだけ面白い逸話がよく続くなあ、と思えるほどでした。
食べ物、ギャンブル、お金にまつわる話など、筆者の生活感覚や日常が色濃く反映したエッセイです。吉本的なお笑いとはまた違った活字の面白さが見事なまでに伝わってきました。日常に疲れた時に頭を空っぽにして読むと、疲れも吹っ飛ぶようです。