黒川博行さんは、ハードボイルドやミステリーを量産している作家ですが、その日常の面白さは、小説とは違う趣きが漂っています。元は、夕刊フジの2002年4月から2007年3月までに連載した「大阪バカボンド」を改題し、抜粋・加筆修正し、編集して2008年3月に発行した本です。
本書の並びでは、ギャンブルに毒される、恐妻に慄く、ショッピングで憂う、老いに抗う、小動物を愛でる、愛車に惑う、という6つの章にまとめていますが、当然バラバラに掲載された抱腹エッセイをジャンルに固めています。
麻雀ネタ、それも豪快に負けるシーンの情けなさや可哀そうさはこのエッセイのキモでしょう。実際はどうか知りませんが実によく負けます。これだけ持ちだすのなら最初からやらなければ今頃左うちわなのにと人ごとながら心配しますが、ギャンブル好きはどれだけ負けようとギャンブルをやめないからこそ、面白いエピソードが続くわけですが。
また、筆者と奥さんの会話の面白さは、まさしく夫婦漫才のようです。奥さんは日本画家として実力のある方ですが、お笑いのメッカ・大阪でご夫婦とも育ち、生活しているわけですから、笑いのセンスは一級品です。随所に二人の会話が登場しますが、どの話も見事なオチが付いています。日常の出来事なのですが、それらが漫才やショート・コントのようで、会話のテンポが秀逸でした。
この笑いのセンスは、関東と関西の違いもあり、生活環境の違いで受け入れにくい人もあるかもしれませんが、ページごとに面白い逸話がよく続くなあと思えるほどでした。
食べ物やお金にまつわる話など、筆者の生活感覚や日常が色濃く反映したエッセイです。吉本的なお笑いとはまた違った活字の面白さが見事なまでに伝わってきました。