3本の作品が収録されています。
「のび太の海底奇岩城」
この作品は、海底冒険をしよう、という以外にプロットを決めずスタートしたかのような印象を受けます。
夏休みにドラえもんの道具を使ってみんなでキャンプをしよう、という、他の大長編に比べて地味な導入で、登場する道具も「水中バギー」や「テキオー灯」という、便利だけど遊び心のないものです。また、冒頭の「フリ」である幽霊船もストーリー上うまく活かされているとは思えません。ではこの作品がイマイチなのかと言えば、否、大変面白いのです!
作中で海中バギーに備え付けられたコンピューターが起動してからは、その偏屈な性格の人工知能がアイテムをキャラクターへと変貌させたのです(以下、バギーちゃんと呼びます)。
「海底奇岩城」といえばバギーちゃんなのですが、約30年ぶりに読み返してバギーちゃんが登場時はただの道具だったことに驚きでした。閑話休題。
この後、バギーちゃんとしずちゃんとの交流が少しずつ丁寧に描写され、後半の展開の布石となります。片やアトランチス人の遺志を受けたポセイドン軍団、片やしずちゃんの優しさを受けたバギーちゃんという対比構造には考えさせられるものがあります。
また、ドラえもん一行が知り合う海底人の設定が「竜宮城の八日間」(大全集10巻収録)でのそれを拡張したもので、比較してみるのも面白いでしょう。時代が異なるのでひょっとしたら同種族かもしれません。
「のび太の魔界大冒険」
前作から一転、ドラえもんとのび太の前に二人の姿をした石像が突然現れるという衝撃的な導入部分です。本作では伏線とその回収の流れが秀逸で、そのカタルシスには感嘆します。魔法対秘密道具の異種対決や、うそENDのような遊びをふんだんに取り入れ、娯楽性に富んだ、傑作ぞろいの大長編の中でも傑作だと言えるでしょう。
「のび太の宇宙小戦争」
「宇宙開拓史」に続き、再び宇宙が舞台となりますが、驚くのはその世界の設定の細かさです。藤子先生は「小学○年生」連載分では年齢に合わせて作品の難易度を調節していますが、コロコロコミック連載の本作ではストッパーをはずしたかのように、マニアックなまでにSF設定が敷かれています。
そして本作の主役はスネ夫! 導入部分でスネ夫、ジャイアン、出木杉がアマチュア特撮映画製作に興じる様子は、現実的な線でうらやましいものです。そしてその撮影に使ったプラモデルで、宇宙人に力を貸し、なけなしの勇気を振り絞る姿には意外性とともに気持ちよさを感じさせます。