今や,最先端で白亜紀末の大量絶滅を研究している研究者にとっては,全く迷惑かつ困った本である.
白亜紀末の大量絶滅の原因が小惑星衝突であることは,世界の最先端の研究者にとっては,もう議論する余地のない当たり前の事実なのである.従って,昨年(2010年),世界最高水準の学術誌Science誌上において,世界最高の頭脳の12カ国41人による共同論文が発表されたのである(Schulte et al., 2010, vol.327, p.1214-).そこでは,何故マントルプリュームの噴火が大量絶滅の原因ではないと考えられるか,はっきりと述べられている.
この本の著者・金子氏は,K-T境界(現在では,正しくはK-Pg境界)より30万年前に小惑星が衝突したとするKellerらの研究を信じきっているようだが,この説は既に多くの研究者によって棄却されている(いきさつの詳細は,後藤和久,2005,地質学雑誌,vol.111, p.193-).
また,K-T境界後にも恐竜が生き残っていたと書かれているが,出典も明示されていないし,元になったであろう文献に記述されている大型の卵の化石は,後に鳥の卵であったことが研究者によって判明している.
今,一番旬でバリバリの真の科学者による恐竜絶滅論争の最前線のレビューは,岩波書店が出している「科学」という雑誌に,昨年9月に掲載された(高橋昭紀・後藤和久,2010,恐竜絶滅研究の最前線,vol.80, no.9, p.945-953).真の科学を学びたい方は,それらを読んで勉強すべきであると思う.