時代劇の定番であるニヒルな剣士物のルーツとも言える超大作。主要登場人物百数十人。
しかし純粋に時代劇として、剣豪小説として読めるのは最初の数巻だけで、ここまでは手に汗握る面白さですが、
あとは次第に「思想小説」へと変化して行き、いくつものストーリーが絡み合いながら
「人間界の諸相を曲尽して、大乗遊戯の境に参入するカルマ曼陀羅の面影を大凡下の筆にうつし見んとするなり」
と作者が言っているように独自の仏教観に基づき「無明」をテーマとした世界が展開されます。
ストーリーの整合性よりも思想が先走って、いったい何を書いているんだろうと思わないでもないですが
通俗的な意味での物語性も残ってはいるので何とか読み進めないこともないです。
最後の方では時代劇というより、それが書かれていた昭和初期の出来事をそのまま取り入れたりして作者の筆は走りまくります。
全巻通して読む価値があるかといわれれば少々躊躇します。そもそも未完ですし。
なお机竜之介が一応主人公とすれば、裏主人公は神尾主膳でしょう。