アンチ・アメリカの流れに乗った一本かと思うとちょいとそれは違う。
描かれているのは戦争を遂行するシステムそのものであり、大統領が誰になろうと最後まで戦争を貫徹できるシステムがアメリカにあるという事だ。だからこの映画はブッシュ大統領を悪人に描く事はしない。むしろ素朴な普通の政治家として描いている。大統領への憎悪も実はアメリカの政治システムによって演出されたものであり、大統領の暗殺を誘発するような移動日程の情報の暴露も政府の中から起きたという事にしてある。早い話が大統領などかませ犬という事で、アメリカが勝つまで、敗北しないようになるまで戦争がやめられないシステムが作り上げられていのだ。
一番感動的でやりきれないのが、事件に関った人間たちが皆個人個人としては正義感に燃えているにも関らず、それが最終的にはより強力な独裁制・軍国国家への道につながってゆくくだりである。危険な男を放置しておくのは最も危険な事だと言えばなるほどとは思うが、今の世界を見れば危険な男を始末する事で、もっと危険な男の出現を招くかもしれないという不安がさらに人々を縛り付ける。
世界を覆う閉塞感そのものをこういうスタイルで描いたという事に感心した。無論、民主主義の国は日本も含めてそういう危険を孕んだものである事は言うまでもない。