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物語は17世紀中頃、家光の代になって世の中が戦乱から遠ざかり徳川300年の太平が始まろうとしていた頃、由比正雪が不平牢人を集めてクーデターを企てた慶安事件を題材にとっている。が、司馬自身は「由比正雪を書きたかったのではなく、治世に謀反を企てる人間たち」を書きたかったという。
由比正雪のクーデター計画は大阪、江戸、駿府の同時蜂起を狙った大規模なもので、豊臣の遺臣も多く残っていた時代、ひょっとするとこの事件をきっかけに再び戦乱となり徳川幕府は転覆していたかもしれない。同じ時期、中国では清が明を滅ぼそうとしており、明の残党である鄭成功の物語も、この小説のもうひとつの軸として描かれていることを考えると、この17世紀中頃という時代が、時代の変わり目となり得た可能性も大いにある。
治世から動乱へ向かう「時代の気分」をひとつの大きなテーマとしている司馬にとってこの題材は、幕末から明治を扱った多数の作品に通じるものであり、その意味では一貫しているといえるだろう。
ただ、この作品を全集に入れるのを拒んだ、というエピソードからすると、やはり「時代の気分」を書ききったかどうか、という点で不満があったのかもしれない。物語のスケールは大きく構成も緻密で娯楽時代小説としては申し分ないが、読後感にはさほど残るものはなかった。
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