個人的に以前から見たかった作品。
まず、かのハリーハウゼンの師匠、「キングコング」ウィリス・オブライエンの最後期の作品であること。
監督はと言うと、「原子怪獣現る」(53)でハリーハウゼンと組み、本作の2年後に「怪獣ゴルゴ」を送り出すことになるユージン・ルーリー。
いかに低予算とくさされようが、オールド特撮ファンとしては一度は見てみたくなろうというラインアップではないですか?
結果は・・・・予想を裏切らない、小粒ながら怪獣映画の王道と言っていい佳作でした。
内容は、自作「原子怪獣現る」に材をとった「ゴジラ」(海外版・56) に対する、ルーリー監督の返歌、といった趣き。
まず巻頭で食物連鎖における生物濃縮の考え方をもとに、強烈な放射能汚染を受けた頂点捕食者の誕生を予言しているあたりがニヤリとさせられる。
その後も、なぜかやたらに美人なブロンド女性科学者が唐突に登場するなどということもなく、米国代表vs英国代表ともいうべき2人の科学者が重厚にストーリーを展開していきます。
ハリウッド映画の常道ともいうべき本筋と関係ないコミックリリーフやラブストーリーを廃し、ひたすら硬派に怪獣ロンドン上陸までのサスペンスを盛り上げていく手法は、イギリス映画の心意気を示して楽しませてくれます。
ストップモーションアニメ部分はロンドン上陸以降の10数分と確かに短いのですが、限られた予算の中でビヒモスの巨大感を出すオブライエンの職人芸が見事です。晩年は不遇だったと言われる彼ですが、水中を泳ぐ怪獣をストップモーションで処理する意欲的なカットなど、なお情熱を失っていないことを示しています。
興奮すると強烈な生体電流と放射能を放出して敵が消し炭になるまで焼灼するビヒモスのパワフルな暴れっぷりと、逃げ惑う群衆が次々とケロイドを発症して倒れていくリアルな描写を堪能して下さい。