最初の本の導入から忍者のごとき、プロフェッショナルな『賊』の話にゾクッとさせられ、
その後は444ページを一気に読んでしまえる。
ある2人の賊および他の犯罪者の手口をケーススタディとして、
長年のデータや研究を元に深く読み込み解説しているのは、
筆者でなくては出来ない『業(わざ)』でもある。
防犯をえさに商売をするものに対しての警告、
軽薄な世の中、マスコミに踊らされている日本人に対する警告も内包されている深い本である。
巷間にあふれているなんでもありの、誰かが言っていることを薄っぺらな視点で真似をする、
なんと安易な安易な防犯本の多いことか、そういったことを深く感じさせる本であり、
防犯に関係する者のバイブルとして長く語り継がれる本である。
もうこういった『勉強熱心な』本当のプロフェッショナルな賊がいないことを前提に
(対抗するプロフェッショナルはもっといない)色々な手口や信条が書かれているが、
裏を返すと捕まらない、獲るためのマニュアルであり、
逆に獲られるほうにとっては防御のマニュアルでもある。
むしろ一般の生活者が安全に過ごすために、
建物などの堅固さではなく、心の隙、コミュニティの隙を作らない知恵を教唆してくれる。
また最近の安全セミナーや小学校などで言われている安全マップ(『入りやすく、見えにくい場所』)が
全くとは言わないが何の役に立たない、むしろ心の隙間を狙う犯罪者にとって、
好都合とも思えることが良く分かる。
1,2章は読物として、3章は後述することに対する理論、第4章探る第5章獲る第6章退散するはその理論をもってすると、とても面白い
惜しむらくはオウム事件で有名な国松元警察庁長官が帯にコメントを載せているが、
この本の解説としてどういうコメントをするかもう少し詳しく知りたかった。
また文中に書かれている『賊』と『大泥棒』の違いを見るに付け、
題名は『賊』でいいのではないかと思われるが、
底に筆者や東洋経済新報社(ここがこういう本を出すのが面白い)の敢えて『大泥棒』にした意図が垣間見えて面白い。
老若男女関係なく、読物としても、専門書としても、マニュアル本としても使え、
闇の隙間から狙う、端倪すべからざる賊に対抗するために
コピペ本にありがちな、薄っぺらな知識をローリングさせる本を10冊買うのであれば、
この1冊で十分なコストパフォーマンスを持っている本。
国松元長官がこんな本は二度とでないというだけの本である。