下巻は、我が国初の釣指南書を書き最後まで竿を握ってくたばった釣狂い投竿翁と俳人芭蕉の死の間際まで過去の句を改稿した執念が対比して描かれる。
釣り船禁止令が出て釣り好きは身悶えするような苦しみであった。
上巻の豪華な登場人物のほか下巻には仏師、医師、小鼓方、三味線、琵琶の名人等多彩な遊び人が登場する。
英一蝶と仏師の民部、美男の風流人医師半兵衛はこの世の序列をひっくり返し(人間所詮糞袋)、金のありそうな人間をつかまえてはえげつないほど遊びに金を使わせる。但し、自分たちの懐を肥やそうとはしなかった。
三人は、将軍や幕臣を当て付けて困らせついには捕縛されてしまう。一蝶は三宅島に流された。
当時の人たちは現代人より遙かに度胸と勇気と知恵があったらしい。
それでも、残った仲間たちはしばしば茶会を催した。
島むろで茶を申すこそ時雨哉(其角)
遊びは続いたのである。
哀しい人間ほど釣りにゆくのだ。
竿は杖である。
綱吉の死により生類憐令はなくなった。
かれい見てすぐ帰る春の富士(一蝶)
波間のことも夢のまた夢(其角)
もう一人の主役津軽采女はこの世の不幸を一身に背負って生きたが生涯淡恬、水を楽しみ現存する我が国最古の釣指南書「河羨録」を残した。