今回は発売時期もあいまってか、めでたいお正月から幕が開きます。なじみ客の三人、もと許嫁の瑠璃、回船問屋の主、懇意のお奉行、など順繰りの顔見せがすがすがしい初春です。お正月で疲れた胃腸や肝臓のためにと出てくる大根料理。
今回はこの大根料理の競い合いと、もうひとつ美男役者の物語の2本のラインが絡みます。
江戸城御用達の料理屋をもう一軒決めるための、三つの店の料理人による大根料理の競い合いに、季蔵は立会人をつとめます。その席で殺人が・・・・
料理にかける三つの家のそれぞれの事情や運命がしみじみとあらわになってきます。
また女形の春雷が早替わりでつとめる悲恋の狂言が大当たり、この巻の女性たちに大きな影響を与えます。この演目に絡んだ少しほほえましい事件も起きますし、ひょんなことから、季蔵は彼と知り合い、意外な過去をきくこととなり・・・
料理人たちと役者、それぞれの事情に決着がついて、新たな道を歩みだすラストは、季節感とともにしっとりと余韻を残します。このシリーズでは、料理人はじめ職人や役者たちがひたむきに仕事に打ち込み、それを人生としてゆく姿を描くことが多く、悲喜こもごもの中でも潔いです。
大根料理と蛤をかたどった菓子。季節の料理が事件の象徴となるのは今回も変わらず、季蔵は表立った動きはしないものの、すでに弟子もきちんと育てあげ、腰も据わり、押しも押されぬ塩梅屋のあるじとして人々の芯になってゆく感じです。
あとは、おき玖の思いが実るのかどうか・・・
菓子や味噌漬けの魚についての蘊蓄などもじっくりと読ませ、新春にふさわしい巻となりました。(ちなみに最初の事件がきっかけとなってできるお菓子は、ちょっと変わり種で笑えます。)