大江氏が、半世紀に亘って、留まることをせず、文学の最前線を切り開き続けてきた、という事実は誰も否定出来ない偉業としか言いようがない。近時の『おかしな二人組』3部作では、小説内での事実が新たな物語を生み出す多層構造が、もはや自然な姿の域に達しており、「私小説」から「小説世界の私的創造」という大江ワールドの全貌が揺ぎ無いレベルに達していることが分る。
このインタビューは、この過程を、彼の作家としての信念・理念のみならず、生い立ち・生活・家庭環境等から、産み・培われたものであることを実に自然に分らせてもらえる。
この過程を彼の作品と共に歩んできた読者にとって、極めて納得感があるとともに、彼の作品のReReadに向かわせる良い機会になる、良質な本である。
只、ここから新しい読者を掴めるかは、正直、難しいかもしれない。