昭和大喪は時代の移り変わりであるとともに、様々な論議を呼んだ。この時代
を大人として過ぎた人々には様々な想いが交錯したようである。
原氏も、そんな一人で、新聞記者として取材して、「近代天皇制」を問う端緒
を得た。
そんな中で、管見の限り、大正天皇という人物に直接焦点を当てた先行研究は
本書以前にはなかった。Amazonでは著者名による索引ができるので、原氏が
どのような著作を残しているかは分かると思うが、本書の眼目は皇太子時代の
巡啓の実態に迫る手がかりを残したことである。パイオニアたる宿命で、伊藤
之雄氏などから批判を浴びてはいるものの、元新聞記者らしく、人に読みやす
いということを自然と心がけた名著と言えるであろう。
私たちは「遠眼鏡事件」しか大正天皇を知らないのであるから。