2011年4月刊行の最新作。津原泰水が"ブラバン"を書いたときと同じく、牧野修が「青春小説」だなんて、絶対嘘だね!と勘ぐった方もおられようが、開けてビックリほんまにストレートな青春ものでありました。
舞台は大阪、を思わせる逢坂。あったかもしれないパラレルな世界ともとれる「大正二十九年」の物語。ともに藝術を志し、逢坂女子美術専門学校に通う4人の女子。冷たい知性と横溢する天才性を感じさせる池田千種、同じく天性の格闘センスを持ちその道を邁進する星野逸子、難病に冒された不自由な身体と、しかしそれを補って余りうる想像力の翼を広げる犬飼華羊、何事にも代え難い素直で柔らかな感性を持った緒方陽子。この強い絆で結びついた4人それぞれの視点を通し、とある猟奇連続殺人、あるいは戦争へと突き進む不穏な世相の中で輝く一瞬の「青春」が描き留められる。
そういえば牧野さんって大阪藝大卒だったよね、ということも思い起こされる、様々なアートの要素が散らされた物語。巻き起こる陰惨な殺人が、黒いオーラを放つ実在の絵画を象ったものであったり、藝術の存在意義を問う描写がところどころで顔を出したりと、このへん、作者らしいといえばらしいのだけど、意外やそうした(二重の意味での)マイナー調は今作ではあくまで影の存在に留まって、青葉のような若さの輝きはそれに呑まれない。そして「戦争」という破滅的な暗がりへと飛び込んでいく不穏な情勢だからこそ、この一瞬の輝きが愛おしく、その愛しさが直接、読後の清々しい喪失感とも繋がった。こういうのも、ありやね。