副題の通り、まさしくノスタルジック&モダンの世界が感じられる本です。
大正時代の抒情画は、筆者のコメントの通り「画家自らの感情を表現した、少女のためのイラストレーション」でした。
竹久夢二の女性画は「乙女の憧れ」のイメージ通りです。雑誌「少女画報」や「新少女」などの口絵を見開きで掲載してありました。たおやかな姿が大正の女性像を映しているようで、センチメンタルという形容が相応しい絵姿です。
高畠華宵のどこか西洋的な風貌の女性は、装飾的な色彩を帯びており、見事な雑誌の口絵だと言えます。
「月の沙漠」の作詞者としても有名な加藤まさをが描いた少女は可憐な風情が漂っています。25ページの絵葉書などは今でも大人気を博すると思いますが。
蕗谷虹児は当時の少女の雑誌の挿絵画家として人気を博した画家です。童謡「花嫁人形」の作詞家であったことは本書で知りました。
須藤しげるの清潔感のある画風も素敵です。
14ページからは、まさしくアール・ヌーヴォーの雰囲気が漂う抒情画家が紹介してありました。今ではほとんど忘れ去られている人たちですが、「大正ロマン」のイメージを強く感じさせる画風に惹かれました。
大正時代に流行した着物を紹介しており、近年この時代の和装の装いが注目されますが、実に和と洋のデザインの折衷がモダンです。特にパラソルのデザインは秀逸でした。傘の骨の曲がり具合もよく、今でも購入したいと思える物たちです。
柳原白蓮、松井須磨子、宝塚少女歌劇団、フルーツパーラーなど、多様な取り上げ方がしてあるので、多くの人に興味を持ってもらえる内容だと思います。
「大正ロマン」という言葉が、1970年代後半に出現し、以降使用されるようになったというのは知りませんでした。
なお、筆者の石川桂子さんは竹久夢二美術館学芸員です。