大本営の情報参謀が、戦後40年近くの沈黙を守って、戦中情報がどう扱われたか、の体験を語る貴重な本.さぞ酷いものだったか、という話かと思えば、著者自身を始め、個々には諜報・情報の重要性を認識し、分析に長けた参謀もいなかった訳ではない.だが、システムとしては全く戦争国とは思えないものだった.行間から伝わる著者の嘆き・静かな怒りは、時に心を打つ.著者は引揚げ後、山下兵団の記録を書き綴り、父親から「負けた戦を書いて銭をもらうな」との叱りを受け、何十万もの声なき戦没者を慮り、沈黙を守ることになる.個々は別として、全体としては未だまともな諜報・情報機関を持たない戦略なき国家は、いつになれば著者の警告を受けとめることができるのだろうか.戦没者の無念を思う時、現状はあまりに悲しい.