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大往生の島 (文春文庫)
 
 

大往生の島 (文春文庫) [文庫]

佐野 眞一
5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

沖屋室島は七割が老人で、しかも彼らは底抜けに明るく生きていた。大宅賞作家が受賞後、初めて書き下す、生と死をみつめた異色ルポ
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

瀬戸内海に浮かぶ過疎の島、周防大島。民俗学者・宮本常一の足跡を訪ねる旅の途上で、著者は明るく逞しく生きるこの島の老人たちに出会った。温暖な気候、質素な食生活、敬虔な信仰心、そして支えあう人々。つましく素朴な島の暮らしのなかには、きたるべき高齢化社会を照らす一条の光明が見える。

登録情報

  • 文庫: 291ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2006/05)
  • ISBN-10: 4167340062
  • ISBN-13: 978-4167340063
  • 発売日: 2006/05
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.2  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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7 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By TaroTaro トップ500レビュアー
形式:文庫
この作品の舞台となっている、高齢化率日本一の島(山口県周防大島・沖家室島)は、著者が敬愛する民俗学者宮本常一の生まれ故郷である。そして、描かれているのは、この島で暮らす老人達である。

著者はあとがきで、「…暗い予断を導き出すだけで終わる“高齢化社会論を避け、…人びとの姿形と息づかいだけを書こうと心がけたのは、宮本の教えを忠実に守ろうと思ったからである」と記している。宮本の取材方法は、徹底的に「歩くこと」「見ること」「聞くこと」である。そういった意味ではこの作品は成功している。

著者はこの作品を自分なりの『忘れられた日本人(宮本の著作)』と位置づけたのだろうが、そうなりきれない部分もある。宮本にあって彼にないもの、いい意味での軽さである。著者は高齢化社会論を避けたと述べているが、どうしても批評性が滲み出てしまう。そして、それが、特有の粘っこい文章と合わさると重く感じられてしまう。

とはいえ、問題を抱えながらも明るく生きる老人達の姿を描いた、いかにも佐野眞一らしい作品である。地味な作品であるが読む価値はある。
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形式:文庫
周防大島はこの世の楽園かに思われた。20年近く前、職場の友人の実家があったこの島に盆休みを利用して9連泊したことがある。夜が深い。主産品のミカン山と畑、蚊帳越しに縁側から見る夜の外は緑色の光が幾つか。狸の目だという。作物が喰われるとは聞かなかった。
日中は海遊び三昧だ。美しい海。地元の名人が首まで海に浸かり、手持ちの糸車を静かに引くようにチヌ(黒鯛)を釣るのだという。敏感なチヌは人の影が水面に映るだけで警戒して、まったく釣れなくなるという。素人は岩場から浮きやルアーで釣る。入れ食いだ。砂浜から針を落としてもコチがバンバン釣れる。

本書は周防大島の来歴と文化、そこに見るあらまほしき故郷の姿を捉えて余すところがない。
当時、2万人と言われた島民は、盆暮れに20万人となる。島から出て行った若者たちは、必ず帰ってくる。ブラジル移民が多く、人口比率では驚異的な移民率だったということである。
「旅する巨人」宮本常一は、この島を拠点に、全国を歩く(因みに、宮本の出身地は周防大島本島の東和町長崎であり、沖家室島ではない。評者はまさに東和町長崎に滞在した)。

ここに限界集落の負のイメージは乏しい。「若い者はドンドン外へ出て行け」という心性が根付いているとみえる。沖家室島では、戦後も早い時期からコーヒー、パンの朝食が当たり前と言う「ハイカラ」ぶりだったという。外部の文化を取り入れることに柔軟で、「外へ行け」というエートスが息づいていることがわかる。
しかも彼らは帰ってくる。そして様々な物を持ち帰る。しかし、生活スタイルは手放さない。海とミカンと太陽を目いっぱい浴びた野菜類である。夜は8時には眠る。4時ごろには目が覚める。温暖な気候、豊かな海山、米は乏しいが多彩な野菜類。

さて、あの滞在から20年が経とうとしている。周防大島はどうかわったのだろうか。佐野眞一には是非再訪してもらいたい。それは改めて限界集落の概念を問い直すものになるだろう。
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形式:文庫
 超がつくほど過疎と高齢化の進む島。だがそこは絶望ではなく、緩やかに時間の流れる心地よい空間だった。「旅する巨人」の取材中に出会った空間に見せられた著者がレポートするもう一つの老後。それは特別なものではなく、かつては普通に存在した形の老いだ。
 ただ著者も認めるように、これは共同体の残る田舎でしか成立し得ない。都会では富裕層は私設のケアマンションに入り、貧乏人は公立の収容所に身を埋めるしかない。何より決定的な点は、助け合いやボケ、貧困などは少なくとも、やはりそこに未来が無いということ。私には20年後、島のコミュニティが存在し続けているとはとても思えない。
 我々にはせめてこのような形で老いを受け入れるしかないのだろうか。これが現時点で最も幸せな形であるのは間違いないのだが。
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