この作品の舞台となっている、高齢化率日本一の島(山口県周防大島・沖家室島)は、著者が敬愛する民俗学者宮本常一の生まれ故郷である。そして、描かれているのは、この島で暮らす老人達である。
著者はあとがきで、「…暗い予断を導き出すだけで終わる“高齢化社会論を避け、…人びとの姿形と息づかいだけを書こうと心がけたのは、宮本の教えを忠実に守ろうと思ったからである」と記している。宮本の取材方法は、徹底的に「歩くこと」「見ること」「聞くこと」である。そういった意味ではこの作品は成功している。
著者はこの作品を自分なりの『忘れられた日本人(宮本の著作)』と位置づけたのだろうが、そうなりきれない部分もある。宮本にあって彼にないもの、いい意味での軽さである。著者は高齢化社会論を避けたと述べているが、どうしても批評性が滲み出てしまう。そして、それが、特有の粘っこい文章と合わさると重く感じられてしまう。
とはいえ、問題を抱えながらも明るく生きる老人達の姿を描いた、いかにも佐野眞一らしい作品である。地味な作品であるが読む価値はある。