60年代から70年代に駆け、時代を疾走した"闘う映画作家"大島渚のBOX第三弾は、極めつきの問題作「日本の夜と霧」に、「パッチギ!」でのリスペクトの記憶も新しいフォーク・クルセダーズを主演にして、公開時、文字通り観る者全てを唖然、驚然とさせたという、"逸脱"と"反復"のスラップスティック・コメディ「帰ってきたヨッパライ」に、数多い大島作品の中でも、殆ど陽の目を見ることがなかった(私も未見)、あの古畑任三郎"田村正和"も出演している(笑)異色作「無理心中、日本の夏」の3作が収録された作品集だ。アラン・レネの秀作ドキュメンタリーの原作でもある、アウシュビッツ収容所でのユダヤ人虐殺のルポルタージュの題名から名づけた「日本の夜と霧」は、日米安全保障条約延長を受け、全国的レベルで、それに反対、阻止しようとする一大ムーブメントが巻き起こった60年安保闘争の総括と、その運動に関与した全学連の主流派、反主流派、それに党派の、50年代の破防法時代まで遡った闘争と確執の歴史と、党派への糾弾を描き、好き嫌いは別にして、その後の左右知識人や、学生たちに多大な影響を与えた、極めて"政治"的な映画として語り継がれているが、実は、時系列を切り刻んだ構成に、ワンシーン、ワンカットやフラッシュ・バック、ストップ・モーションと、映画的技法にも卓越した部分が多い、正に日本映画史に残る傑作だ。私は60年生まれ、そしてこの映画をはじめて観たのは、80年代の初め、その頃より更に今では、この映画に描かれていることは、もはや"隔世"の感があるが、ひとりひとりの人間が、時代を「変革」する事が出来ると確信出来た幸福な時代の、パッショネートでインテリジェンスな世界観を確認できる。