60年代〜70年代に駆け、時代を疾走した大島渚のBOX集、いよいよ登場。特に、今作に収録されているのは、大島が松竹時代に撮った初期の傑作で、松竹ヌーベル・ヴァーグと呼ばれる契機となった「愛と希望の街」、「青春残酷物語」、松竹と訣別後、立ち上げた創造社の第一作であり、武田泰淳の名作を映画化した「悦楽」、いずれも初DVD化という貴重な作品集だ。中でも、生きていく為に鳩を使って"詐欺"を繰り返す極貧な母子家庭の小学生と、その鳩を買った裕福な少女の、そして、それを見守る女教師と兄との、交流と断絶を通じ、プロレタリアート層とブルジョワ層の間には、決して乗り越える事など出来ない"壁"があるのだと言う命題を、冷徹かつ明確に提示し、その後の新左翼系知識人と映画ジャーナリズムに多大な影響を与えた「愛と希望の街」は、当初の「鳩を売る少年」とのタイトルとその内容から、小市民的メロドラマとヒューマンドラマが主流だった松竹にとっては、暗い、救いがないとの理由でタイトル変更を余儀なくされ、結局原題名で公開、大島をして、この映画には希望などないのに、と慨嘆させた、その後の大島映画の原点とも言える傑作だ。時代は移り変わり、今ではその作品自体が、"時代"を感じてしまうのは否めないが、60年代、高度経済成長に湧く「日本」の翳と歪みを照射し、アバンギャルドで刺激的に「国家」を撃ち続けた"闘う映画作家"の軌跡を、今一度振り返って見たい。ただ残念なのは、今回のラインナップに、初期の大島映画を語る際、絶対に避けて通れない「日本の夜と霧」が収録されなかった事。WHY?