収録作品の中では「草冠の姫」と「たそがれは逢魔の時間」が好きです。
なかでも「草冠の姫」は私の中では「パスカルの群」「いたい棘いたくない棘」と並ぶベスト3。
とんでもない出会いから始まって、不思議なハッピーエンドにいたる物語は、大島さんが数多く描いているパターンですが、なぜかマンネリにならないのが不思議です。369ページで描かれるヒロインの姉が、若き日の、いしだあゆみさんに似ていると感じるのは私だけでしょうか。
「たそがれは逢魔の時間」は、大島さんの作品には珍しく小悪魔的な女性が登場します。初老の主人公がいだく初恋の人への純粋な“恋”、主人公と小悪魔的女性の間に芽生えるほのかな“思い”、主人公と妻の間にある年月を重ねた“愛”、それぞれに味わいがあって、面白い作品です。
なお、本巻、初版第1刷には、いくつか印刷ミスがあり、なかでも巻末に掲載されている大島さんの小説について、タイトルを間違えた上、冒頭の1ページ分が脱落しています。知らなかった人は、出版社へ連絡しましょう。