思慮を欠くムサイの暴走が招く偽装NEI惑星壊滅の危機と二人のハルト人の細胞活性装置探索の冒険行を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第382巻。本巻の執筆者は、ユーモア重視の匠エーヴェルスと人間性重視の匠ダールトンです。ムサイからヨルショル霧状星雲に展開する偽装NEI惑星のからくりの情報を得たラール人ホトレノル=タアクは同盟を結ぶと偽り、惑星全土を殲滅すべくSVE大艦隊を送り込む。
『大宇宙の地獄』H.G.エーヴェルス著:半サイノスの上司ロルヴィクが原生生物の氷ザルに連れ去られた事に発奮した部下のタッチャーは、NEI乗員達と捕われの身の旧ミュータント・ベティの救出に奮闘する。本編ではタッチャーがサーベルタイガーのウォルターを見失いコピィ・ロボットを作った失敗が最後に全部活きて来る仕掛けが見事です。ローダンとて全能でなく、遅れて来たアトランから誤解されるのが気の毒です。『世界の壁』クラーク・ダールトン著: ハルト人トロトとペルラトの二人は銀河系に残る細胞活性装置の行方を求めて狂人の惑星ワーダルへと向かう。今回は理由があるとは言え宙族の生き残りを懸命に助けるハルト人の活躍に感動し、最近異常だったトロトがようやく人間性を取り戻した事にホッとしました。最後に宙族レディ・ティーパを偲び黙祷を捧げましょう。
本巻の翻訳者、五十嵐洋氏のあとがきは十年を掛けて「具象」の訳語に辿り着くまでの経緯と苦労話です。「ローダンとアトランの対立が更に深刻化する」という次巻予告には誠に胸が痛みます。古くは58巻「惑星サオス包囲作戦」でアトランが偽ローダンのカーディフを見破ってローダンを助け、最近では328巻「地球最後の奇術師」で逆にローダンがラール人による処刑からアトランを助けた時の「古き良き時代」の記憶を呼び起こし、一刻も早くお互いが原点に帰って信頼と友情を取り戻して頂きたいと望みます。