テルムの女帝の故郷惑星ドラクリオチに到着したローダンとドゥールトとのテラのポジションを巡る駆け引きと女帝が憂慮する惑星ルーグ=ピュアの謎に挑むテラ戦士達の活躍を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第401巻。本巻の執筆者はシリーズ最多の執筆量を誇る大御所フォルツとダールトンです。本書の二編は意識して書かれたかどうかは不明ながら明と暗の対極的な人間ドラマが描かれています。ダールトンが描くシンプルな若い男女の愛は文句なしに良い物ですが、フォルツがあえて描いた人間の持つ負の側面も重く厳しいテーマながらもシリアスで深く考えさせてくれます。
『大宇宙のセイレーン』ウィリアム・フォルツ著:ローダン一行は惑星到着を前にして突然ケロスカーとその装置セタンマルクトとの予期せぬ別れを経験するが何とかショックを乗り越え無事にケルセイレーンの惑星で女帝との会見に臨む。本編では猫男ブジョを本能的に憎む歪んだ心の男が登場し、ブジョに命を救って貰っても疑り深く頑なに信じない絶対に理解し合えない悲しい溝の存在とどうしようもない状況が描かれています。他にも女性優位なケルセイレーンの社会で追い詰められて精神に異常を来たし理由なき殺意を抱く男が描かれるなど珍しくダークな雰囲気が漂っています。『死せる子供の惑星』クラーク・ダールトン著: ローダンは女帝の依頼に応えるべく、ネズミ=ビーバー・グッキーとハルト人イホ・トロトとソラナーの男女各一名の計四人の調査隊を死せる子供の惑星ルーグ=ピュアに派遣する。本編ではグッキーとトロトが行き違いになって喧嘩になる騒ぎもあり少し心配になりますが、でも結局はやはり二人の長年の信頼と友情は揺るがずホッと一安心します。テラ戦士が一方的に活躍するのではなく、正義感の強いケルセイレーンの老いた聖杯の母ザンヤ=ロと協力して解決に導く展開に好感が持てます。そして、何と言っても愛し合う若い二人の仲を取り持つグッキーが女性乗員に頸の毛皮を撫でられて夢心地になり幸せそうな表情を浮かべるラスト・シーンが私は本書の中で一番大好きです。
本巻の翻訳者、赤坂桃子氏のあとがきは普段テレビを見ない氏が数年振りに東日本大震災の報道を食い入るように見て感じた思いを真摯に綴られています。次巻の予告はありませんが、女帝のもう一つの課題‘忘れられた者たちの場所’トロルトゥングの調査に続いて、アラスカとの再会やテラを舞台にしたバルディオクとの戦いが待つのでしょうか。でも新サイクルはまだ始まったばかりで先は長いですので今から焦らずじっくりと構えましょう。