著者は米国の大学経営の実態に触れ、日本に戻ってさまざまな大学経営に携わってきた経歴を持つ。米国の大学も過去に全入時代を経験し、その中で多くの淘汰と改革が行われたそうである。この本の特徴は、そのような著者の経歴を反映した解説が行われているという点だろう。
少子化と大学総定員枠の拡大によって、日本の大学経営は危機に直面している。著者によれば、2010年台に約1割が倒産する可能性があるとしている。その上で、現在の日本の大学が抱えている問題点を整理して示し、日本の大学が注力して改革すべきポイントと今後進むべき方向性について多くの提言を行っている。授業の質や職員の専門性といったプロフェッショナルとしての教育力の向上を訴え、何より「ミッション」という各大学における教育経営方針の具体化と明確化の重要性を説明している点が印象に残った。
一部の著作にみられる、学生の学力低下問題と大学経営の在り方に関する問題の論点をすりかえたバッシングのような記述は本書には見られない。むしろ現実を受け止め、これからの大学が目指す方向性として、一流の研究を行う大学、高い教養を身につけるための大学、偏差値が高いとはいえない学生をしっかり教育して社会にとって有益な人材として送り出せる大学の3種類に分けて、それぞれが社会において重要な役目を担うプロの教育機関として機能するビジョンを示している。
「大学版事業仕分け」では、大学図書館の貸出し率の低さなどにも焦点をあてている。また、近年の大学授業料値上げの背景、女子大や短大、マンモス校と小規模校、宗教系の大学、地方の大学、大学の系列校についても触れている。
批判や問題点の指摘をそれだけに終わらせず、現実を踏まえた様々な提言につなげている点で一読の価値がある。タイトルから受ける印象とは異なり、日本の大学が今後とるべき道について真面目に論じている本である。