本書はミルがセントアンドルーズ大学の名誉学長に就任した際の講演を文庫化したものです。講演を書籍化したものは言葉遣いが平易なものの切れ目がなく、
内容のまとまりをとらえづらくなることがありがちですが、本書では見出し・小見出しや注、解説が充実しており、また講演自体の整然さもあって非常に読みやすくなっていますので、空いた時間などに手軽に読めます。
内容としては19世紀のイギリスの大学教育に関するものであるので、現代の日本人にはピンとこない点があり、
また各分野の専門性が高まり総合的な教養教育がさらに難しくなっていることは留意すべき点ではあります。
しかし、大きなテーマである大学における「教養」の問題に関しては、就職のための学歴を得ることが主で、
大学教育自体が軽んじられる傾向にある現代の日本においても議論されるべきトピックであり、示唆に富むものであると思います。