大学という場所で学生のケアを長年やってきた精神科医による、事例を中心とした本。大学教員向けに書かれた本のようだが、評者にとっても参考になるものだった。過保護な親、温室育ちの子供、人の心に極端に無頓着な年寄り、KYと呼ばれた首相、自殺した大臣などを想像して読むと色々と得るものがある。寄せ集めという感じはあるものの、決して乱暴な内容や無責任な内容や薄い内容ではない。
本書の大部分は「事例+解説+接する際のアドバイス」という構成となっている。各病気や各病状に関してこれの繰り返し。リストカットや統合失調症や自殺なんてのは専門家でない限りお目にかかる機会は少ないだろうけど、引篭りや鬱病は身近なものとして読めた。身近に感じるだけに、生々しい事例は読んでいてブルーになる。他には本来の仕事と患者サポートのバランスのとりかたや専門家に手助けしてもらう方法や統計データなどが書かれている。大学生の年齢や大学といいう環境に特化した部分はあるだろうけど読んでいてイメージはわく。鬱病患者と接する際のアドバイスとして述べられた「暖かく無関心な態度」という表現は心に残った。