職場のいきいきとした事例による、具体的なプロセスと方法論に満ちた実用書。
早稲田大学教職員による複数のプロジェクトの事例をもとに、プロジェクト運営手法を紹介したものである。
”WISDOM@早稲田”という大学教職員有志による自主的研究グループによって書かれている。
本書は、大学職員をターゲットとして書かれているという。
しかしながら、教職員の長年の経験を元にしているからであろう。
大学組織の枠を超えた”組織論”の書として、人間社会での普遍性を持つ珠玉の教訓に満ちている。
強く印象に残った箇所を下に記す。
・「みんなで決めたわけではないけれど、これが合理的なのだ」という決定の仕方をしてしまうと、問題となった部分は水面下でいつまでもくすぶり続ける (p54)
・能力の判断基準となるのは、過去の会議での発言や作成した資料、そして実績。それ以外は見ないこと (p84)
・理不尽な批判にさらされるメンバーがいれば、全力で守るのがリーダーの務めです (p100)
・(メンバーの功績、褒めることを称えて)人は少しの賞賛を杖に、人生を歩むもの (p126)
・プロジェクトを発進した後、熱烈な賛同者を増やすよりも、反対しない無関心層を増やすことに力を注ぐべき (p181)
・報告書作成の際には、伝統がものをいう。伝統継承の価値はいわば葵の御紋の役割を果たします (p182)
大学といえば、象牙の塔という印象があるが、本書を読むとイメージが変わった。
予算と人材をどうに合理的に使い、大学、社会をよくするかということを、著者は常に考えていることが窺える。
また、全体的な印象として受けたのが、著者の辞書に「予定調和」という文字はないということである。
様々な現実の葛藤を織り込んでプロジェクトに向かうという姿からは、精神の強靭さと前向きな姿勢を感じた。
確信的な言い切りもしばしば見られるが、どれも経験に立脚した力があるがゆえに、押し付けがましくなく、むしろ、とても爽やかな印象を受ける。
多くのプロジェクトで問題を抱える大学職員の方のみならず、企業の方にとっても、非常に有用な実用書であろう。