全巻で予告されたとおり、江島生島事件の顛末が描かれます。
よしなが大奥であえて、肉体交渉すらない、切ない純愛物で押し通すとは…
今の世の女性にも通じる、容姿という悩み。痛々しかったです。
そしてとうとう、7巻目にして舞台が八代将軍吉宗の時代に戻ります。
外国との軍事力(男性人口)の大差を知った吉宗は、早期の開国や貿易などの無理を悟り、
しかし将来に備え、徐々に男子の扱いを変えてゆきます。その際の吉宗の言葉、
『守るのは私ではない この国そのものだ!』
…いい言葉です。このようなトップを戴く国は幸せだと思います。
改めて色々なメッセージ、人が抱く志を描いた作品だと感じました。
名君の誉れ高い吉宗を「人の心の細かな襞というものが分からぬ」としたのも凄い。
歴史上の人物の性別を入れ替えるというアイデアは昔からありますが、
この作品に感じるのは「こうだったら面白い」というものではなく、
「女は“産む性”からは逃れられない」という、当然だけど業のような決まり事です。
産めずに苦しみ、産んで苦しみ、亡くして苦しむ…
父親であるのに娘よりも愛する人を心に掛けてしまう、月光院とは対照的。
それにしても多くの登場人物が、怖い位に誰かの、何かの為に生きている。
私利私欲、或いは自分の為に動く人物(藤波とか柏木とか)が可愛く思えてくる位に。
江島生島事件を巧妙に誘導した宮路は演技賞ものですが、彼を操っていたのは…
歴史とは名を成した人と、名も無い人との共作として続いてきたものなのでしょう。